ドレッドヘアの歴史

ドレッドヘアの歴史をご存知ですか?
ドレッドヘアは、世界中でたくさんの人々に知られている髪型です。
しかしその強いインパクトとステレオタイプなイメージが先行し、歴史や信仰についてはあまり興味をもたれていないというのも、事実ではないでしょうか?
ということで、今回はそのあたりにスポットを当ててみました。
Contents
ドレッドヘアのはじまりは?

いつどの国でドレッドヘアが生まれたかに関しては、様々な国に諸説あります。
しかし、その起源を示す客観的な証拠が存在するわけではなく、また宗教的な信仰が含まれている説もあるため、「正しい説はこれ!」と特定することはできません。
現在のところ、物理的に残っている最古のドレッドの例は、エジプトで発見された古代エジプト人ミイラのものです。古代エジプトのレリーフや彫刻にも、ドレッドヘアの姿が残されています。
ただしこの例も、古代エジプト期(紀元前)にドレッドが「既に存在していた」という証拠であり、ドレッドの「起源」を示す証拠ではありません。
他には、ペルーのナスカにある遺跡(紀元後のもの)から、髪をロングドレッドにしたミイラが発見された…という例もあります。
書物に記されている例としては、その思想・知識が世界の宗教・哲学に影響を与えたといわれる、インド最古の文献「ヴェーダ」があります。
ヴェーダに登場する神のひとりであるシヴァとその崇拝者が、髪をドレッドにしていた…と言われています。
他には、ケルト人・ヴァイキング・ゲルマン人・ネイティブアメリカン・ユダヤ教徒のナジル人(なじるびと)、初期のクリスチャンの中にもドレッドにしている人が存在した…という説もあります。
宗教的信仰を表すドレッドヘア

世界には、宗教的な信仰を表すものとして、髪をドレッドにする人々もいます。以下はその例です。
ラスタ
ジャマイカで生まれた宗教であるラスタ。
マーカス・ガーヴィーの黒人解放運動と旧約聖書・アフリカの土着的信仰・ヒンズー教などを源とした思想をもち、1930年、エチオピア皇帝となったハイレ・セラシエ(=ラスタファリ)を神として信仰しています。
ラスタ信者は「人の体は神殿であり、自然な状態が最も尊い」という信仰に基づき、髪に刃物は使わず、洗髪しつつ自然に伸ばし続けます。それが髪のドレッド化につながっています。
つまり、信仰を守ると自然にフリーフォームドレッド(※)になる…ということです。
※フリーフォームドレッドとは、ドレッド自作方法のひとつ。髪を洗って清潔にしつつ、一切のブラッシングをやめることにより、自然にドレッドを形成させる方法です。どの髪質でも可能です。詳しくは「ドレッドヘアの作り方フリーフォーム」参照。
※ラスタについて詳細は「ラスタとドレッドヘア」参照。
サドゥー

インドのヒンズー教の一派に属する行者サドゥー。
ドレッドをjata(ジャタ)と呼び、物理的世界の自分を清め、虚栄心を捨て、外見に重きをおかず、精神性の向上を促す神聖なもの…としています。
ンガッパ
チベット仏教ニンマ派に属する在家密教行者およびヨーガ行者である、ンガッパ。
ドレッドは、物理的な世界からの目覚めを助けるものであり、虚栄心を遠ざけるもの…としています。ドレッドに関しては、サドゥーと共通するものを感じさせる思想です。
バイファル
イスラム神秘主義の信仰派スーフィーに属する一派である、バイファル(セネガル)。その中にもドレッドヘアにしている人がいるとされています。
その他の信仰

ドレッドヘアにまつわる信仰でその他のものといえば「ドレッドヘアは、頭から抜け出てしまうエネルギーを少なく抑え、超自然的な肉体的・精神的エネルギーをもたらす」…というものがあります。
世界中で知られるようになったドレッド
以上から、ドレッドがかなり昔から存在し、さまざまに信仰されてきたことが分かります。
では、現在のように信仰の有無にかかわらず、ドレッドヘアが世界中で一般的に知られるようになったキッカケは何だったのでしょう?
それは、レゲエの神様として有名なボブ・マーリーです。
70年代、彼の音楽が世界的な成功を収めたのに伴い、強烈なインパクトをもったドレッドヘア・ラスタの思想・ジャマイカという国の存在も、広く知られることとなりました。
その際、レゲエは反体制の姿勢をもつ音楽として、ドレッドと共にパンクスやヒッピーにも受け入れられることになりました。
ちなみに管理人の個人的な意見ですが、90年代~2000年代にかけては、ヴィンテージなロックやファンクの影響濃いシンガーソングライターのレニークラヴィッツ、ヘヴィロックバンドのKorn(ジョナサン・デイヴィス)、ラップとメタル/ハードロックを融合したバンドのRage Against The Machine(ザック・デ・ラ・ロッチャ)、などの世界的成功も、クールな髪型として一般層への認知度を広げたのではないか…と、思います。
また、ヒップホップの世界的な普及も影響しているでしょう。
むすび
今回は、ドレッドヘアの歴史・信仰について特集しました。
とはいえ、現在ドレッドは性別・年齢・国を超越して多くの人々に愛好されており、ご紹介したものはそのほんの一部、表層にすぎないと思われます。
ちょっとネットで検索してみるだけども、ドレッドを愛好する理由について、多種多様な意見を知ることができます。
ドレッドはファッションとして楽しむのはもちろん、いろんな思想から好きなものを取り入れ、自分にしっくりくる意味合いを込めてみる…というのも、楽しみ方のひとつではないかと、管理人は思います。
※関連ページ:人がドレッドヘアにする理由とは