ラスタとドレッドヘア

「ドレッドヘアといえば?」と聞かれて「ラスタ」と答える人は、かなり多いのではないでしょうか?しかし、それが何かと問われると良く分からない…という人もまた多いでしょう。
ということで、今回はラスタの概要やドレッドとのつながりについての解説です。
Contents
ラスタとは?

ラスタ(ラスタファリ-rasta/rastafari)とは、ジャマイカで生まれた宗教的思想・生活スタイル、及びその信仰者・実践者を指します。
1930年、ジャマイカ出身のマーカス・ガーベイ(Marcus Garvey)による黒人地位向上運動から派生する形で誕生しました。(※)
信仰の内容としては、マーカス・ガーベイによる黒人地位向上運動・アフリカ回帰思想と旧約聖書を基盤にしつつ、ヒンズー教・アフリカの土着信仰などが混ぜ合わさったもので出来ています。
具体的には、アフリカ回帰主義・菜食主義・自然回帰志向、などが挙げられます。
ハーブ(大麻)は神聖な植物とされ、瞑想など宗教的儀式の際や日常生活でも吸引されます。ハーブ吸引は、快楽のためではなく、心と体を癒し、神をより深く理解し、感謝と賞賛を贈るために行う…と考えられています。
ただし、必須ではなく、吸わないラスタもいます。
また、ラスタの教義はキリスト教などのように固有の聖典としてまとめられているわけではなく、開祖もいません。
ちなみにジャマイカ国内では、主流派宗教がキリスト教であること、ハーブの吸引が違法であること、一部の有力者が国を動かすことに対する抵抗思想を含んでいることなどから、ラスタ=反体制的であるとみなされることもあります。
※1920年代、ジャマイカ出身のガーヴィーが「アフリカに黒人の王が即位する時、彼は救世主になるだろう」と発言。1930年、エチオピアで皇帝として黒人のハイレ・セラシエが即位したことにより、彼を「生き神様」とみなした人々によって信仰が誕生。「ラスタファリ」とは、ハイレセラシエの即位前の名前。つまりラスタ思想において神を意味する、ジャー(JAH)やラスタファリは、ハイレセラシエを指します。
ラスタカラーの意味

ファッションでもよく見られるラスタカラー。それぞれの色には意味が込められています。
緑はジャマイカの豊かな自然、黄(金)はジャマイカ国旗からとった色であり太陽、赤は戦いで流された血、黒はジャマイカ独立で戦った黒人戦士を表しています。
ラスタがドレッドにする理由は?

ラスタ信仰者は「人の体は神殿であり、自然な状態が最も尊い」という教義により、体に刃物を入れません。ゆえに、髪の毛も切らず櫛も使いません。
洗髪をしつつブラッシングを止めると、人の髪の毛はその髪質にかかわらず房状になっていくため、自然にドレッドヘアとなります。
※関連ページ:ドレッドヘアの作り方【フリーフォーム】
ヒンズー教徒(サドゥー)がドレッドヘアにすることが影響を与えた、という説もあります。
ドレッドヘアは多くのラスタにとって、信仰の表れ・アイデンティティ・どのくらい信仰を続けてきたかを示すもの…という重要なものですが、人によって意見の違いもあります。
例えば「ラスタは髪型の問題じゃなく、精神的な信仰の問題だ。だからドレッドじゃなくても良い」「ラスタになるのにドレッドは必須じゃないが、信仰を守っていたら自然にドレッドになる」などです。
また、ラスタはドレッドをハーブの入った水でしか洗わない、と言われることもありますが実際は人それぞれであり、普通にシャワーや川などで洗っている人もいます。
ラスタとドレッドを世界へ広めたボブ・マーリー

現在、ラスタとドレッドヘアの存在は世界中で知られていますが、その大きなキッカケとなった人物がボブ・マーリー(Bob Marley)です。
ボブ・マーリーは、ジャマイカ出身の伝説的レゲエミュージシャン(※)であり、熱心なラスタ信仰者でした。
※ボブ・マーリーは脳腫瘍のため1981年に亡くなりましたが、ジャマイカでの葬儀は国葬となるほどの強い影響力をもっていました。
70年代初期、彼の音楽が世界中でブレイクしていくのに伴い、ラスタ思想とドレッドヘアにもたくさんの人々の関心が集まり、普及していきました。ドレッドヘア・ラスタ・レゲエといえばボブ・マーリーをイメージする人は現在も多く、影響力が今も継続していることがうかがえます。
レゲエ・ラスタ思想・ドレッドヘアはボブが作ったものではありませんが、その拡散の歴史において、彼が果たした役割はとても大きなものであり、その音楽的な才能と持って生まれた強いカリスマ性なくしては成しえなかった事だった、と言えるのではないでしょうか?
※関連ページ:ボブ・マーリーのドレッド
むすび
今回は、ラスタとドレッドについて概要を書きました。
信仰の中身など詳細については触れていないので、興味を持った人はリサーチして更に知識を深めていくのも良いでしょう。
ちなみに管理人自身はラスタではありませんが、リスペクトの気持ちは持っています。特に、心と体にとって有害なものを取り込まない…という考え方は(自分が実行できるかは別として…汗)日々をより穏やかに過ごすのに役立つものだと思います。
※他サイトですが、管理人がこの記事のためにあれこれ調べていて面白いと思ったラスタ関連ページのリンクを載せておくので、気になった人は参考にどうぞ。
・神本秀爾『History Hunters ラスタファーライの実践』#共生する日本のラスタファーライ「それは宗教ではなくて生き方だ」